自然に入る心構え

房総横断・鋸山トレイルアドバイザー
プロアドベンチャーレーサー 田中 正人

 トレイル(登山道)は自然の中に入るもっともポピュラーなものだと思います。不整地の走行に慣れればランナーの方々にも楽しく走ることができます。変化に富んだ地形に応じた身体の使い方は、疲労が分散されて長く動き続けることができます。景色に癒され、気温、風、香りなどを感じて自然の中で動き続けるトレランの魅力に気づいた人も多いのではないでしょうか?

 しかしながら、自然環境は素晴らしさとともに厳しさも併せ持っています。初心者の方に対しても容赦なく天候を変化させますし、想定外の事態が生じればすぐに一晩サバイバルをしなければならなくなります。

 この時に装備や知識、そして心構えがなければ生死を分かつことにもなりかねません。

 トレイルランニングの魅力と強みは軽装で高速移動ができることです。そして最大の武器は鍛え上げた体力です。バテない体力を使い続けることで体温を維持し、軽装でも行動し続けることができます。

 でも、一旦傷病者となり動き続けることができなくなったら、一気に不利になります。停滞した途端に体温が下がり、保温できる装備が十分にありません。
 傷病以外にも道迷いで遭難する可能性も多くあります。現在地がわからなくなった時の心構えや対処法を身に付けておかないと重大な事故に繋がってしまいます。

 一歩自然の中に踏み入ったら、そこは町中とは全然違うということを意識する必要があります。ロードランニングと同じ感覚ではとても危険です。ランナーである以前に登山者になる意識を持ってみましょう。

 自然に対して戦うのではなく、自然をリスペクトし、謙虚な気持ちで慎重に行動してみることをお勧めします。そういう意味では、同じフィールドの大先輩である登山者に学ぶ姿勢を持つことは有意義です。走っている自分に優越感を持つのではなく、走らせてもらえる感謝の念を持って、謙虚に行動してみてください。素晴らしい自然の中でより豊かな気持ちになれると思います。自然と調和し、あらゆるものに感謝する気持ちが湧いてくることがアウトドアアクティビティの最大の魅力ではないでしょうか? 多様なジャンルの人たちと共に、同じ環境を楽しむ仲間として尊重し合いましょう。全ての責任を自らに課すことで、他者や環境に対して不平不満を言ったり攻撃的にならずに済みます。自ら課題解決する心意気を持つことが自然環境に受け入れてもらえる手段であり、物事がうまく進む要因になります。これは日常生活や一般社会でも同じです。自然から学べることは沢山あります。皆さんも一緒に経験していきましょう!

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